介護保険施設でのターミナルケア
ターミナルケアのイメージを覆す
介護保険施設のおじいちゃん、おばあちゃんの物語
このコースは、今まで関わってきたターミナルケアの中で印象に残っているケースを中心に構成しています。
話の中で、2人のおばあちゃんと1人のおじいちゃんが登場します。
3人とも問題行動と言われることばかりするお年寄りですが、日々接する中で私たちのほうが逆に教えられることが多かったように思います。
例えばケアプランは、問題点指摘型はだめで「〜だから〜したい」という目標志向型で書かなければいけませんが、意識障害・言語障害・認知症のお年寄りは「〜したい」とは言えません。
そうなるとケアプランを立てることはできないのか、或いはそういう人の「〜したい」というニーズが簡単にわかってしまうほうが問題かもしれない、ということを考えさせてくれました。
また、認知症が進んだおばあちゃんは、何かあると踊るという所謂「踊る呆け」でしたが、私たちにとって「問題行動」だったこの踊りは、実は故郷のその家の人しか踊れない、おばあちゃんと故郷の人たちをつなぐ大切な踊りでした。
昔、ばくち打ちだった脊椎損傷のおじいちゃんは、ある時容体が急変し、介護士が救急車を呼ぼうとしたところ、「行くな」と止めました。
介護士は抱きしめる以外に術はなく、おじいちゃんはその介護士の腕の中で息を引き取りました。
おじいちゃんは、何が自分自身にとって大切かということ、そして私たちは仲間が行なった介護に誇りを持つことが重要ではないかということを、私たちへ教えてくれたように思います。
このコースで学べること
- ケアプランを立てるために
- 問題行動とはなにか
- 食べ方は生き方
- 救急車を呼ぶとはなにか
- 死後発見をどう思うのか
- どう近づけるか
- 温かい人間関係
- 関係性の不始末
- 信頼関係とは
- 一人の人のために
- 固有名詞として死ぬということ
病院で死ぬときに人は病名で死ぬと聞いています。
しかし、生活支援の場で死ぬということは、病名ではなく固有名詞で死ぬことです。今、私たちの前で消え入った命は病名ではありません。
今まで泣いたり笑ったり恨んでみたりもう一度信じてみようと思ったりした、一人の名前を持った人間が、今、名前を持って亡くなったのです。
私たちはその別れを悲しみます、残念がります、惜しみます。
しかし、お年寄りの見事な死は、さみしいとは思わせますが、悲しいと人を追い詰めるようなことはしません。
私たちは、人を病名ではなく固有名詞で見送るケアを、私たちの生活支援のターミナルケアとしてとらえていきたいと思います。
About the Instructor
高知医療学院理学療法学科を卒業後、福岡県の医療グループに勤務。
同グループの医療費不正請求事件による混乱を目の当りにして、老人医療の現実と矛盾を知る。
これが原点となり高齢者の生活に密着した介護現場での活動を展開。
特別養護老人ホームシルバー日吉に介護職として勤務、介護部長、デイサービスセンター長、在宅部長、そして、医療法人財団百葉の会、法人事務局企画教育推進室室長及び介護老人保健施設ききょうの郷生活リハビリ推進室室長、介護老人保健施設鶴舞乃城看・介護部長を歴任。
現在は、介護老人保健施設星のしずく看・介護部長を勤める傍ら講演活動、介護アドバイザーとして全国を飛び回る毎日。
日々現場と向き合いながら、人材育成に尽力している。
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